ロックドラムの歴史を語るうえで、ジョン・ボーナムの存在を避けて通ることはできません。彼のドラムは、単にリズムを刻むだけの演奏ではなく、聴く者の感情を強く揺さぶる力を持っています。なぜジョン・ボーナムの一打一打は、これほどまでに重く、深く、心に響くのでしょうか。
本記事では、伝説的ドラマーと称されるジョン・ボーナムの人物像をはじめ、唯一無二の演奏スタイル、圧倒的なテクニックとグルーヴ、そして使用していたドラムセットや名演奏に至るまでを徹底的に掘り下げていきます。
ジョン・ボーナムのドラムに魅了されたことがある方はもちろん、ロックドラムの本質を学びたい方にとっても、多くの発見が得られる内容です。彼のドラムが時代を超えて語り継がれる理由を、具体的な要素とともに解き明かしていきます。
ジョン・ボーナムとは何者か|伝説的ドラマーの基本情報
ジョン・ボーナムは、イギリスのロックバンド「レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)」のドラマーとして知られ、ロック史における象徴的な存在です。代表曲「When the Levee Breaks」「Kashmir」「Good Times Bad Times」などで聴ける一打一打は、単なる伴奏を超えて楽曲の骨格そのものを作り上げました。本章では、ジョン・ボーナムの人物像を固有名詞とともに整理し、なぜ「伝説的ドラマー」と呼ばれるのかを基本情報から解き明かします。
ジョン・ボーナムのプロフィールと生い立ち
ジョン・ボーナム(John Bonham)は1948年にイングランドのレディッチ(Redditch)で生まれました。幼少期から打楽器への興味が強く、早い段階でドラムに没頭したことで知られています。後年の「重く太いビート」は、この頃から培われた手癖や身体感覚の延長線にあり、理屈で整えたドラミングというより、身体が先に音を決めてしまうタイプのプレイヤーでした。ロックのドラムに求められる「推進力」を、若い頃から直感的に理解していたことが、のちの評価につながります。
レッド・ツェッペリン加入までの経歴
レッド・ツェッペリン結成以前のジョン・ボーナムは、地元周辺でのバンド活動やセッション経験を重ねながら実力を磨いていました。彼の名前が大きく動いたのは、ギタリストのジミー・ペイジ(Jimmy Page)が新バンド結成に向けてドラマーを探していた時期です。ボーカルのロバート・プラント(Robert Plant)、ベース/キーボードのジョン・ポール・ジョーンズ(John Paul Jones)とともに、1968年にレッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)が始動し、ボーナムはオリジナルメンバーとして加入しました。この4人の相性の良さが、後の名盤群へ直結していきます。
「伝説」と呼ばれる理由
ジョン・ボーナムが「伝説」と言われるのは、速いフレーズや難しい手順だけで評価されているからではありません。たとえば「When the Levee Breaks」では、ドラムの音色と間(ま)が楽曲の世界観を決定づけ、「Kashmir」では反復するリズムが巨大なうねりとして曲全体を支配します。またデビュー期の「Good Times Bad Times」では、バンドの看板を一発で成立させる推進力が提示されました。音数が少なくても、打点が正確で、重心が深く、音の輪郭が太い。そうした総合力が、他者が真似しにくい独自性となり、時代を超えた評価につながっています。
バンド内での役割と存在感
レッド・ツェッペリンのサウンドは、ジミー・ペイジのギターリフやロバート・プラントのボーカルが注目されがちですが、土台を作っているのはジョン・ボーナムのドラムです。彼のビートは、テンポを一定に保つだけでなく、曲の緊張感を上げたり、サビで爆発させたりと、楽曲のドラマを設計する役割を担いました。アルバム「Led Zeppelin II」や「Led Zeppelin IV」、さらに「Physical Graffiti」などでは、曲ごとに質感を変えながらも、どの曲でも一発で「ボーナムだ」と分かる輪郭を残しています。バンドの個性を強くしながら、全体のまとまりも失わない点が、存在感の大きさを示しています。
他メンバーとの関係性
ジョン・ボーナムの価値は、単独の技巧だけでなく、バンドメンバーとの呼吸の合い方にも表れます。ジミー・ペイジのリフに対してドラムが同じ熱量で返すことで、音像が一段階分厚くなり、ロバート・プラントの歌が乗った瞬間に「ロックの塊」になります。ジョン・ポール・ジョーンズのベースラインとも噛み合いが良く、低域の一体感がバンドの重心を支えました。特にライブでは即興的な展開が多い中でも、4人のアンサンブルが崩れにくかった理由の一つが、ボーナムのリズムの強度と柔軟さにあります。
愛称「ボンゾ」の由来
ジョン・ボーナムは「ボンゾ(Bonzo)」という愛称でも親しまれました。豪快でエネルギッシュなキャラクターと、音の迫力が結びつき、ファンや関係者の間で定着した呼び名です。このニックネームが示す通り、彼のドラミングは「強い」「大きい」だけでなく、演奏する人間の体温や性格がそのまま音に現れるタイプでした。だからこそ録音でもライブでも、機械的な正確さとは違う、人間的な熱が残り続けます。
音楽史における評価
ジョン・ボーナムは、ロックドラムの基準を押し上げたドラマーとして評価され続けています。代表的なアルバムとして「Led Zeppelin II」「Led Zeppelin IV」「Physical Graffiti」が挙げられ、代表曲では「When the Levee Breaks」「Kashmir」「Good Times Bad Times」が広く参照されます。彼のプレイは、派手さよりも芯の太さで聴き手を動かし、曲を前に進める力そのものとして機能します。その結果、多くの後続ドラマーが「影響を受けた存在」として名前を挙げ、今もなお“ロックのドラムとは何か”を語る際の中心に置かれています。
ジョン・ボーナムの演奏スタイルと特徴
ジョン・ボーナムの演奏スタイルは、ロックドラムにおける「重さ」と「推進力」の基準を根本から書き換えたものです。派手なフレーズや過剰な音数ではなく、一音一音の質量と配置によって楽曲全体を支配する点が最大の特徴です。この章では、なぜ彼のドラムが唯一無二と評価されるのかを、具体的な演奏要素ごとに整理していきます。
パワフルかつ重厚なドラミング
ジョン・ボーナムのドラムを語るうえで最初に挙げられるのが、その圧倒的なパワーです。ただ強く叩いているのではなく、スティックの振り下ろし方、リバウンドの使い方、体重移動まで含めて音を作っていました。その結果、スネアやバスドラムの一打が極端に太く、音の輪郭がはっきりしています。「Whole Lotta Love」や「Rock and Roll」では、ドラムが前に出ることでバンド全体のエネルギーが跳ね上がり、ロック特有の高揚感を生み出しています。この重厚さこそが、他のドラマーとの差を決定づけました。
シンプルだが圧倒的に太いビート
ジョン・ボーナムのビートは、譜面にすると驚くほどシンプルです。しかし実際に演奏すると、同じ形にはなりません。理由は、打点のわずかな前後、音量の微差、ハイハットの開閉など、細部に人間的な揺れが含まれているからです。「Black Dog」や「Good Times Bad Times」では、ビート自体は単純でも、グルーヴが常に前へ引っ張る力を持っています。シンプルなパターンでここまで存在感を出せる点が、ジョン・ボーナムの演奏スタイルの核心です。
ロックドラムにおける革新性
ジョン・ボーナム以前のロックドラムは、リズムを安定させる役割が中心でした。しかし彼は、ドラムそのものを楽曲の主役級の要素へ引き上げました。「When the Levee Breaks」では、独特の残響を持つドラムサウンドが曲全体の世界観を決定づけ、「Kashmir」では反復するリズムが壮大さを生み出しています。これはテクニックの革新というより、ドラムの役割そのものを再定義した点に価値があります。その影響は、後のハードロックやヘヴィロックのドラマーたちに強く受け継がれています。
ジョン・ボーナムの圧倒的テクニックとグルーヴ
ジョン・ボーナムのドラムが特別視される理由は、単なるパワーだけではありません。高度なテクニックを誇示するのではなく、楽曲を前へ進めるために最適化された技術と、人間的な揺れを伴ったグルーヴが共存している点に本質があります。この章では、彼の演奏を支える具体的なテクニックと、唯一無二のグルーヴ感について掘り下げていきます。
バスドラムテクニックの革新
ジョン・ボーナムのバスドラム奏法は、ロックドラムの常識を変えた要素の一つです。代表曲「Good Times Bad Times」では、ツインペダルを使わずにシングルペダルで高速な連打を実現しています。これは足首だけでなく、脚全体の反動と体重移動を使った独自の踏み方によるものです。単に速いだけでなく、粒立ちが揃い、音量も安定しているため、リズムが前に転がるような推進力を生み出します。このバスドラムの存在感が、バンド全体の低域を支え、音像に圧倒的な厚みを与えています。
ゴーストノートとダイナミクス
ジョン・ボーナムのグルーヴを語るうえで欠かせないのが、ゴーストノートとダイナミクスの使い方です。スネアの小さな音を要所に忍ばせることで、ビートに立体感と奥行きを持たせています。たとえば「Fool in the Rain」では、表拍の強烈なスネアと、裏で鳴る繊細なゴーストノートの対比が、独特の跳ねるようなグルーヴを生み出しています。音量差を大胆につけることで、ドラムが単調にならず、常に呼吸しているような感覚を与えています。
フィルインの独創性
ジョン・ボーナムのフィルインは、速さや複雑さよりも「歌うような流れ」が重視されています。タム回し一つを取っても、フレーズの始まりと終わりが明確で、次のセクションへ自然につながる設計がされています。「Moby Dick」で聴ける長尺のドラムソロでは、力強いフレーズと間を巧みに組み合わせ、聴き手を置き去りにしません。フィルインが自己主張しすぎず、楽曲全体の流れを壊さない点が、彼の音楽性の高さを物語っています。
ジョン・ボーナムが使用したドラムセットと機材
ジョン・ボーナムのドラムサウンドは、演奏技術だけでなく、使用していたドラムセットや機材選びによっても形作られていました。極端に多くの機材を使うタイプではなく、必要最小限の構成で最大限の音圧と存在感を引き出していた点が特徴です。この章では、彼が実際に使用していたドラムセットや機材を通して、あの独特なサウンドの正体を整理します。
愛用したドラムメーカーとモデル
ジョン・ボーナムが最も有名なのは、Ludwig(ラディック)社のドラムセットを長年愛用していた点です。特に知られているのが、26インチという非常に大口径のバスドラムを含むセットで、このサイズ感が重く深い低音の源となっていました。アルバム「Led Zeppelin IV」や「Physical Graffiti」の時代には、アンバー・ヴィスタライト(Amber Vistalite)と呼ばれる透明なシェルのドラムも使用しており、見た目のインパクトと音圧の両面で強烈な印象を残しています。大きな口径と深胴の組み合わせが、彼のパワフルなビートを支えていました。
シンバルやスネアのこだわり
シンバルはPaiste(パイステ)を中心に使用しており、ハイハットやライドは音量が大きく、輪郭のはっきりしたモデルが選ばれていました。これにより、大音量のバンドサウンドの中でもシンバルが埋もれず、リズムの芯を明確に保っています。スネアドラムについても、深さのあるモデルを好み、強く叩いた際に十分な鳴りと余韻が得られるものを選択していました。これらの機材選びは、繊細さよりも「前に飛ぶ音」を重視した結果と言えます。
セッティングと音作りの特徴
ジョン・ボーナムのセッティングは、意外なほどシンプルです。タムの数は最小限に抑え、演奏中の動線が短くなるよう配置されていました。その分、一打一打の精度と説得力が際立ちます。また、チューニングは高く張りすぎず、低音がしっかり鳴る状態を維持していました。特に「When the Levee Breaks」で聴ける独特の残響は、録音環境とドラムの鳴りを活かした結果であり、過度な加工に頼らない音作りの好例です。機材はあくまで演奏を引き立てる道具であり、主役は常にプレイヤー自身であるという姿勢が貫かれていました。
ジョン・ボーナムの代表曲と名演奏
ジョン・ボーナムの評価を決定づけているのは、理論や逸話ではなく、実際に残された音源そのものです。彼の代表曲には、ドラムが単なる伴奏を超え、楽曲の印象や価値を決定づけている例が数多く存在します。この章では、特に語り継がれる名演奏を通して、なぜ彼のドラムが心を揺さぶるのかを具体的に確認していきます。
「When the Levee Breaks」に見る伝説的サウンド
「When the Levee Breaks」は、ジョン・ボーナムのドラムサウンドを象徴する代表曲です。この楽曲では、重く引きずるようなバスドラムと、深く響くスネアが曲全体の空気を支配しています。テンポ自体は決して速くありませんが、間の取り方と音の余韻によって、圧倒的な重量感が生まれています。ドラムのフレーズはシンプルでありながら、一度聴いたら忘れられない印象を残し、ロックドラムの理想形として今も頻繁に参照されています。
「Moby Dick」におけるドラムソロ
「Moby Dick」は、ジョン・ボーナムのドラムソロを語るうえで欠かせない楽曲です。ライブでは長時間に及ぶソロが披露され、力強いシングルストローク、豪快なタム回し、そして大胆な間の使い方によって、観客を引き込み続けました。このソロの特徴は、速さや複雑さを誇示するのではなく、音の説得力で空間を支配する点にあります。ドラム単体でも音楽として成立させる構成力が、彼の表現力の高さを明確に示しています。
ライブパフォーマンスの凄さ
ジョン・ボーナムの真価は、スタジオ音源だけでなくライブ演奏でより鮮明になります。レッド・ツェッペリンのライブでは、曲ごとに微妙なテンポの揺れやフレーズの変化があり、その場の空気に応じて演奏が進化していました。それでもバンド全体が崩れないのは、ドラムが常に中心でリズムをコントロールしていたからです。観客の熱量を受け止め、それをさらに増幅させるようなプレイは、録音では完全に再現できない魅力として語り継がれています。
まとめ
ジョン・ボーナムは、単なる技巧派ドラマーではなく、ロックドラムの価値基準そのものを押し上げた存在です。重く太いビート、楽曲を前へ進めるグルーヴ、そして音数を抑えながらも圧倒的な存在感を放つ演奏は、今なお多くのドラマーに影響を与え続けています。代表曲や機材、演奏スタイルを通して見えてくるのは、「ドラムは曲を支配できる」という明確な答えです。ジョン・ボーナムのドラムが心を揺さぶる理由は、技術ではなく音楽そのものに向き合う姿勢にあります。
プロミュージシャンでも『一家言を持つ』のこだわりを持つと言われるジョンボーナム。ロックドラマーとして何をお手本にすべきかと一言でと尋ねられたら、僕だったら『タイム感』と答えますね。
素晴らしいドラマーです。

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