ドラマーフィルラッドの存在がAC/DCサウンドを完成させた理由

ロック史において、演奏技術の派手さが注目されることは少なくありません。しかし、AC/DC のサウンドを完成形へ導いた要素は、極めてシンプルなビートにありました。その中心にいたのがドラマー、フィル・ラッドです。なぜ彼のドラムはこれほどまでに重く、揺るぎないグルーヴを生み出せたのでしょうか。

また、彼の不在時にAC/DCサウンドが変化した理由は何だったのでしょうか。

本記事では、フィル・ラッドの経歴、ドラミング哲学、使用機材を通して、AC/DCサウンドの核心を丁寧に解説します。読み進めることで、彼がバンドに不可欠な存在であった理由が明確になるはずです。

目次

フィル・ラッドというドラマーがAC/DCにもたらした決定的な役割

AC/DCの楽曲が持つ圧倒的な推進力と一体感は、ギターリフやボーカルだけで成立しているものではありません。その根幹には、常に揺るがないリズムを供給し続けるドラマー、フィル・ラッドの存在があります。派手なフィルや技巧を前面に出すことなく、楽曲全体を成立させるビートを提示し続けた点こそが、AC/DCサウンドを完成形へ導いた最大の要因です。

AC/DCサウンドの核としてのリズムアプローチ

AC/DCの代表曲である「Back In Black」「Highway to Hell」「You Shook Me All Night Long」などに共通するのは、過剰な装飾を排した明確な8ビートです。フィル・ラッドのドラミングは、テンポを動かさず、曲全体を一定の重心で前進させることに徹しています。このアプローチにより、ギターリフとボーカルが最大限に映える土台が構築されました。アルバム「Back In Black」や「Highway to Hell」においても、このリズム設計が全編を通して一貫しています。

バンド全体のグルーヴを支配するドラミング

フィル・ラッドのビートは、単に拍を刻む役割に留まりません。ベースを担当するクリフ・ウィリアムズのラインと密接に噛み合い、リズム隊として一体化することで、AC/DC特有の粘りあるグルーヴを生み出しています。テンポを急がず、余白を残す演奏は、楽曲に自然なうねりを与え、聴き手に身体的な反応を促します。この感覚はスタジオ音源だけでなく、ライブ音源でも一貫しています。

アンガス・ヤングのリフと共存するリズム設計

AC/DCの音楽的象徴であるアンガス・ヤングのギターリフは、明快かつ反復性の高い構造を持っています。フィル・ラッドは、そのリフを引き立てるため、シンコペーションを極力排し、リフの輪郭を明確にするビートを選択しました。アルバム「Let There Be Rock」収録曲に見られるように、ドラムが前に出すぎないことで、ギターの存在感が際立つ設計になっています。

派手さを排したプレイが生む圧倒的推進力

フィル・ラッドの演奏には、過度なフィルインやアクセントはほとんど見られません。しかし、その抑制こそがAC/DCの楽曲に持続的な推進力を与えています。スネアとバスドラムの配置は極めて規則的で、聴き手に安心感と高揚感を同時に与えます。このスタイルは、ロックドラミングにおける一つの完成形として評価されています。

フィル・ラッド不在時に浮き彫りになった存在価値

フィル・ラッドがレコーディングに参加していない時期の作品では、リズムの質感に明確な変化が見られます。技術的には優れたドラマーであっても、AC/DC特有の間合いや重心を完全に再現することは容易ではありませんでした。この事実は、フィル・ラッドのビートが単なる演奏技術ではなく、バンドの音楽性そのものと結びついていることを示しています。

ライブとスタジオで一貫するタイム感

フィル・ラッドの特筆すべき点は、ライブとスタジオでタイム感がほとんど変わらないことです。テンポの安定性は楽曲全体の完成度を左右する重要な要素であり、AC/DCが世界中で同じクオリティの演奏を提供できた理由の一つです。公式ライブ映像や音源を通しても、その一貫性は明確に確認できます。

AC/DCが世界的成功を掴んだ理由としてのドラム

AC/DCが長年にわたり支持され続けている理由は、時代に左右されない普遍的なサウンド設計にあります。その中心にあるのが、フィル・ラッドのドラミングです。シンプルでありながら再現性が高く、楽曲そのものを際立たせるリズムは、ロックバンドにおける理想的なドラムの在り方を示しています。彼の存在なくして、AC/DCサウンドの完成は語れません。

フィル・ラッドの経歴|加入・脱退・復帰までの軌跡

フィル・ラッドの歩みは、AC/DCというバンドの音楽的変遷と強く結びついています。加入、離脱、そして再合流という流れは、単なるメンバー交代の履歴ではなく、バンドサウンドの方向性そのものに影響を与えてきました。ここでは、年代ごとの活動を音楽的な視点から整理します。

AC/DC加入以前の音楽的バックグラウンド

フィル・ラッドはニュージーランド出身のドラマーで、AC/DC加入以前から複数のロックバンドで演奏経験を積んでいました。特にリズムの安定性と、無駄を省いたビート構築は早い段階から評価されており、派手な演奏よりも楽曲全体を支える姿勢が特徴でした。この資質が、後にAC/DCの音楽性と高い親和性を示すことになります。

AC/DC加入と初期作品への参加

フィル・ラッドがAC/DCに加入したのは1975年です。加入後まもなく発表されたアルバム「T.N.T.」や「Dirty Deeds Done Dirt Cheap」では、すでに後年へと続くドラミングの基礎が確立されています。明確なテンポ、均一なスネアの配置、過度な装飾を避けた構成は、バンド全体の音像を整理する役割を果たしました。

全盛期を支えた黄金期の活動

1979年発表の「Highway to Hell」、1980年の「Back In Black」は、AC/DCの代表作として広く知られています。これらの作品において、フィル・ラッドのドラムは全曲を通して安定した重心を保ち、ギターリフとボーカルを最大限に引き立てています。「Back In Black」「Hells Bells」「You Shook Me All Night Long」などの楽曲は、その完成度の高さから現在も高い評価を受けています。

一時的な離脱とサウンドの変化

フィル・ラッドがバンドを離れていた期間、AC/DCは他のドラマーを迎え入れて活動を継続しました。演奏技術の面では高水準を維持していたものの、リズムの質感や間合いには違いが見られました。この時期の作品を聴き比べることで、フィル・ラッド特有のビートがいかにAC/DCサウンドと結びついていたかが浮き彫りになります。

復帰と原点回帰を感じさせた演奏

フィル・ラッドは後年、再びAC/DCの正式メンバーとして活動します。復帰後に発表されたアルバム「Rock or Bust」や「Power Up」では、初期作品と共通するシンプルなリズム設計が再び前面に出ています。年数を重ねても変わらないタイム感とビートの重さは、AC/DCが原点を大切にしていることを象徴しています。

メンバーとの関係性が生んだ一体感

アンガス・ヤング、マルコム・ヤング、ブライアン・ジョンソンといったメンバーとの関係性は、音楽面において重要な意味を持ちます。フィル・ラッドのドラミングは、他メンバーの演奏を制限するのではなく、自由に表現させるための土台として機能していました。このバランス感覚が、長年にわたりAC/DCが一貫したサウンドを維持できた理由の一つです。

経歴から見えるフィル・ラッドの本質

フィル・ラッドの経歴を振り返ると、常に音楽そのものを最優先に考える姿勢が一貫しています。主張しすぎず、しかし欠かすことのできない存在としてリズムを提供し続けたことが、AC/DCサウンドの完成度を高めてきました。この歩みは、ドラマーという立場がバンド全体に与える影響の大きさを示しています。

シンプルなのに唯一無二|フィル・ラッドのドラミング哲学

フィル・ラッドのドラミングは、一聴すると極めてシンプルに感じられます。しかし、その背後にはAC/DCというバンドの音楽性を最大限に引き出すための明確な思想があります。ここでは、彼の演奏を支える中核的な哲学を3つの視点から整理します。

無駄を削ぎ落としたビート構築の思想

フィル・ラッドは、音数を増やすことよりも、必要な音を正確な位置に置くことを重視してきました。「Highway to Hell」や「Back In Black」に代表される8ビートは、余計な装飾を排しながらも、強い推進力を生み出しています。このビート構築は、ギターリフとボーカルが自然に前へ出るための土台として機能し、AC/DCサウンドの輪郭を明確にしています。

フィルインを抑制することで生まれる完成度

多くのロックドラマーが展開部でフィルインを用いるのに対し、フィル・ラッドはその使用を最小限に留めています。「You Shook Me All Night Long」や「Hells Bells」でも、曲の流れを遮るようなフレーズはほとんど見られません。その結果、楽曲全体の一体感が保たれ、聴き手は自然にリズムへ引き込まれていきます。この抑制こそが、楽曲の完成度を高める要因となっています。

リズムで楽曲を成立させるという考え方

フィル・ラッドの哲学の根底には、リズムが楽曲の印象を決定づけるという明確な意識があります。テンポを揺らさず、一定の重心を保つことで、楽曲は安定感と高揚感を同時に獲得します。アルバム「Power Up」においても、この姿勢は一貫しており、年数を重ねても変わらない演奏思想がAC/DCサウンドを支え続けています。

使用機材から読み解くフィル・ラッドのサウンド設計

フィル・ラッドのドラムサウンドは、演奏技術だけでなく、長年一貫して選ばれてきた機材構成によって形作られています。ここでは、彼が実際に使用してきたブランドや仕様をもとに、AC/DCサウンドを支える音の設計思想を読み解きます。

Ludwigを中心としたドラムセットの選択

フィル・ラッドは、長年にわたりLudwigのドラムセットを使用してきました。特に知られているのが、Ludwig Classic Mapleを基調とした構成です。タムやバスドラムは標準的なサイズを好み、極端に深い胴や特殊な仕様は選びません。この選択により、低音が過度に膨らまず、明瞭で輪郭のあるサウンドが得られています。アルバム「Back In Black」や「Highway to Hell」で聴けるドラム音は、この堅実なセット構成が土台となっています。

スネアとシンバルに見る音作りの方向性

スネアドラムについても、フィル・ラッドはLudwig Supraphonicを使用することで知られています。このスネアは、過度な響きを抑えつつ、アタックが明確に出る点が特徴です。シンバルはPaisteを中心に構成され、ハイハットやクラッシュもサイズを抑えたモデルが選ばれています。これにより、シンバル音が前に出すぎることなく、ビート全体が均一に聴こえるバランスが保たれています。

機材に依存しすぎないサウンド設計思想

フィル・ラッドの機材選びから読み取れるのは、特定の音色を誇張することよりも、再現性と安定性を重視する姿勢です。極端なチューニングや特殊なセッティングを避けることで、スタジオとライブの音像差を最小限に抑えています。この考え方により、AC/DCはどの環境でも一貫したサウンドを提供できました。機材はあくまで演奏を支える道具であり、音楽の主役は楽曲そのものだという思想が、ここにも表れています。

フィル・ラッドのリズムがロック史に刻んだ影響と評価

フィル・ラッドのドラミングは、特定の時代や流行に依存せず、ロックという音楽の根幹に深く刻み込まれています。彼のリズムは、派手な技巧ではなく、楽曲を成立させるための基準として、多くのミュージシャンやリスナーに共有されてきました。

後続ドラマーに与えた影響の大きさ

フィル・ラッドの演奏は、ロックドラマーにとって一つの指標となっています。複雑なフレーズを用いず、一定のテンポと明確なアクセントで楽曲を支える姿勢は、多くの後続ドラマーに影響を与えました。特にAC/DCの代表作「Back In Black」や「Highway to Hell」は、リズムパターンの完成度が高く、現在でも練習曲や参考音源として取り上げられることが少なくありません。

プロミュージシャンや評論家からの評価

音楽評論の分野では、フィル・ラッドのドラミングは「再現性の高い理想的なロックビート」として評価されています。音数を抑えた構成でありながら、楽曲の重心を的確に捉える点は、専門家からも高く評価されています。アンガス・ヤングやブライアン・ジョンソンといったメンバーの演奏が際立つ背景には、常に安定したリズムが存在しているという見解は、多くの評論で共通しています。

時代を超えて支持され続ける理由

フィル・ラッドのリズムが長年にわたり支持されている理由は、その普遍性にあります。流行の音色や演奏技法に左右されることなく、楽曲の構造そのものを支えるビートは、時代が変わっても価値を失いません。アルバム「Power Up」においても、その姿勢は一貫しており、AC/DCサウンドの信頼性を現在まで維持しています。この普遍的なリズム設計こそが、ロック史におけるフィル・ラッドの評価を確かなものにしています。

まとめ

フィル・ラッドは、派手な演奏や技巧で注目を集めるタイプのドラマーではありません。しかし、一定のテンポと揺るぎないビートによって、楽曲そのものを完成させる役割を担ってきました。経歴を振り返ると、彼の加入・離脱・復帰は、常にバンドサウンドの質に直結しており、その存在がいかに重要であったかが分かります。

使用機材においても、過度な個性を求めず、再現性と安定性を重視する姿勢が一貫していました。こうした哲学と実践の積み重ねが、AC/DCの普遍的なサウンドを支えています。本記事を通して、フィル・ラッドのリズムがロック史において持つ意味を、あらためて感じていただければ幸いです。

特筆すべきはバックビートの安定感です。
僕もあれこれオカズを挿し込む事に余念が出てきた時はフィルラッドのシンプルな原点のスタイルを見習うためAC/DCのアルバムを聴くようにしています。

特にAC/DCの初心者の方にはBack In Blackオススメです。
気が向いたらお聴きになってみてくださいね。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次